アールブリュット美術館


COLLECTION DE L'ART BRUT(アール・ブリュット美術館) Lausanne,Switzerland(2001年8月)


好き好き生芸術(ハートマーク)。

L'ART BRUT(アール・ブリュット)。

日本では「生の芸術」と訳されてます。「アウトサイダー・アート」とか。

「エイブルアート」「self-taught artist」など呼び方は色々。

日本でもここ10年ほどブームが続いてる模様。

 

独学で、時には精神を病んでたりする市井の芸術家を主に指してますが、分類は難しい。と思う。

ゴッホはどうなるの?子供の絵は?自費で巨大仏つくっちゃうオッサンは?とか。

元々日本でもねむの木学園裸の大将らの優れた作品は有名ですね。

個人的には故ナンシー関氏が採集してた「記憶スケッチ・アカデミー」に登場する作品もこっちに入ると思う。

 

↓街で見かけたこの建物だって生芸術さ!

↓「うちの幼児の作品1998頃」もアールブリュット系と呼びたい!



そもそもアール・ブリュットの名付け親である

フランスの芸術家Jean Dubuffet(ジャン・デビュッフェまたはデュビュッフェ 1901-1985)氏の作品自体、

ここに分類されるのもハテナだし。

POPアートと言われたり。アール・ブリュットと言われたり。

  

私個人はこれら孤高の芸術家の生み出す作品の中では、どっちかっていうと

絵画より立体物特に「巨大建造物」「庭園系」に、より惹かれてます。ハイ。

 

閑話休題。

 

美術館の話に戻ります。 

そのデビュッフェ氏、自分で制作をするかたわらそういう市井の人々の作品をひたすら収集したそうな。

(精神病院を訪ね回ったって。)

で、そのコレクションがスイス・ローザンヌ 市に寄贈されて

1976年アール・ブリュット 美術館(公立)が誕生したというわけ。

(最初に打診したフランスは受け取り拒否。惜しいことしたね。)

 

その収集量は16000点を超えて、このジャンルでは世界一。聖地にして約束の地。

日本のみずのき寮の方々の作品も所蔵されてます。

 

外観はただの一軒家。でしょ?


 内部構造は複雑怪奇。屋根裏やら別館やら繋がってて。

やっぱ内部照明は暗めなので、写真ぶれまくってまーす。黄色いです。


 

 

 

 

 

  

炭鉱夫Augustin Lesage(オーギュスタン・ルサージュ 1876-1954)氏の2m近いサイズの絵。

一切定規も使わずフリーハンド描きだって!



日本でも今や超人気作家となったHenry.J.Darger(ヘンリー・ダーガー 1892-1973)氏の作品は

狭い階段を登った先の特別な小部屋にまとめて展示されてました。

 

ファンシー。写真がまずいせいで色変わってますけど、本物は薄いピンクにブルーの美しい水彩画。

妄想の少女たちはみんな股間に男性器が描かれている。

何故かって?

彼は少女にも男性器があると信じてたのです。女性の裸を見た事なかったから。

彼の生涯、映画化されるらしいですよ。

ヘンリー・ダーガー氏の詳しいサイト


 

作家名は失念したのですが、この描き方は面白いなあ。映りの悪い写真のことはさておき。

「私の眼にはこう見える!」シリーズ。


 

 


狭いスペースだけど、資料といい内容といいとにかく濃かった。松崎しげる氏くらい濃かった。(想像)

まだまだ所蔵は無尽蔵・・・もっと見たーい!

出入り口にはここと深く繋がっている雑誌RAW VISIONのバックナンバーが揃ってます。

気になっていたあの本もこの本も置いてあるって感じで。

研究は日々進められているようですから、今後も次々と新しい天才が発掘されていく事でしょう。

 

リトアニア出身の精神病患者Friedrich Schroder-Sonnenstern(ゾンネンシュターン 1892-1982)の絵画

1960年代始めて日本に紹介された時には、当時の著名人が夢中になって買いまくり、

初日に完売したのよ、と展覧会をプロデュースしたお方に聞きました。

 

日本でもまだまだブームは続くのかな。 

ウィーン郊外には五十嵐久美子監督の映画「遠足 Der Ausflug」で有名になったグギング芸術家の家なんてのもあります。

特にいい絵を描く患者が集まって共同生活を送っている施設。

その絵が都会のギャラリーで高額で売買されることによって患者は経済的に自立するという。ふむふむ。

裸の大将にも式場隆三郎先生がいたし。有能なプロデューサーがヒットの鍵だね!

 

眠れる市井の芸術家、目覚めよ。

腑抜けた現代美術に喝!

リンク:アールブリュット美術館のページ

(2001年8月)