国立民族学博物館


NATIONAL MUSEUM OF ETHNOLOGY

国立民族学博物館 Osaka,JAPAN(2005年3月)


この博物館がどれほど素晴らしいかは・・・うーん、筆舌に尽くし難い。

熱い夏の日も、寒空の時でも、万博公園駅からせっせと歩いて 訪れてしまいます。結構駅から遠いんですよ。

それだけの魅力がここにあるのです。宝の山。

常設展だけでもかなりのグレードなのに、心惹かれる企画展がコンスタントに開催される。

公園のあちこちに設置されている看板をみるだけで、ウキウキ気分。


  

  


みんぱく(国立民族学博物館の呼称)は、民族学・文化人類学に関する調査・研究をおこなうとともに、

その成果に基づいて、民族資料の収集・公開などの活動をおこない、

これらを通して、世界の諸民族の社会と文化に関する情報を人々に提供し、

諸民族についての認識と理解を深めることを目的として、1974年に創設され、1977年11月に開館しました。

国立民族学博物館ホームページより

リンク: 国立民族学博物館ホームページ

初代館長の梅棹忠夫氏、岡本太郎氏、泉靖一氏ら熱い研究者達の尽力で誕生しました。

 

同博物館の膨大な収集品は大きく分けて3つのルーツが核になっているそうです。

1 旧東京大学理学部人類学教室資料 (120年にわたる東大理学部人類学教室の歴史の中で集まった資料)

2 旧文部省資料館資料 (澁澤敬三氏が1921年に創設したアチック・ミューゼアムのコレクション)

3 旧日本万国博協会資料 (太陽の塔内部に展示するための資料が世界中から集められた)

カタログ「ブリコラージュ・アート・ナウ」より

なるほど充実しているわけです。展示資料数13000点。収蔵品はその17倍の225000点。

 

 

正面入口はこちら。黒川紀章氏の設計によるもの。総面積は8400平方メートル。


  


まずは特別展から。

現在開催中の展示は、「きのうよりワクワクしてきた。ブリコラージュ・アート・ナウ日常の冒険者たち」

開催期間は、2005年3月17日[木]〜6月7日[火]。奇抜なポスターが気になっていました。

リンク: ポスター画像

 

今回の特別展は別料金必要なし。大人420円のみ。ちなみに小・中・高生は土曜日無料。

入口で、恐る恐る「写真撮っていいですか?」と訪ねたところ、「どうぞどうぞ」とのお返事。太っ腹!

来館していた盲導犬を連れた視覚障害の方に、係の方がどんどん触って!と展示物を渡していました。素晴らしい。

 

ブリコラージュってのは、要するに、「ありあわせの材料でなんか素敵なものつくっちゃう」ってことらしい。

展覧会の詳しい説明はこちら

おもちゃ箱をひっくり返したような会場です。段ボールやベニヤ板がフリーキーな感じ。文化祭を思い出します。


  


あれ、良く見ると、アーティストのコラージュ作品らしきものの中に、みんぱくの展示物、混ざってる!

南洋のお面、中国の龍、アフリカの缶バッグ、ペルーの悪魔人形、

バングラデシュのリキシャ、あの日本のワラの人形はサネモリサンだ。


  

  

   


博物館が、うちの所蔵品使って自由にやってくれってアーティストに任せて、

それを受けたアーティストが期待に答えてしっかりやり遂げてる。凄い。こりゃ苦労したことでしょう。

この自由で活き活きした空間に、子供達は大喜び。作者の狙い通りワクワクしてます。


  

  

  


アウトサイダー系アーティストの作品も、空間に自然に溶け込んでいます。お見事。

こちらは普段ビニールテントで寝起きされているという市井のアーティストがつくった

13000個のアルミ缶を利用した空き缶ハウス。内部はとても暖かい。

元々、建築業で働いていた経歴をお持ちということで、実に頑丈な仕上がりです。


  


昭和30年代から40年代の日本映画のチラシを自分流に描いた数々の作品。

このアーティストは元々、自分の記憶だけで描いていたそうです。(現在は資料を見る事もあるらしい)

水性ペンと鉛筆とペンだけで、実に味わい深い仕上がり。


  


2階は観客(特に子供)参加型の展示中心。

ポラロイド写真のようなものがついたカチューシャを頭に付けてカメラの前に立つと、

あーら不思議。自分の顔がパンダになってます。画面の中だけで。

右の写真にうつっているぬいぐるみもガラスの花瓶もお菓子も、その場には全て存在していないものです。


     


空間全部を使ったり、椅子を台座にしたりして、巨大なリリアンを編もう!



あー面白かった。さて、続いては本館へ参りましょう。こちらも撮影OKだって。もちろんフラッシュは使いません。

まさか館内で撮影が許されているなんて想像だにされていない他の鑑賞者の方々から、ちょっと白い目が向けられます。

 

常設展示場内で、「企画展示 アフリカのストリートアート展」開催中。

開催期間 2005年2月26日(土)〜9月27日 (火)

本展では、セネガル、コートジヴォワール、ガーナといった西アフリカの国々、および南アフリカの、

いくつかの都市から拾い上げてきた多彩な造形を、「ストリートアート」という切り口からご紹介いたします。

リンク: 企画展示 アフリカのストリートアート展より

 

まずは左の写真。大好きなCDラジカセをここまでデコレートしちゃった!作品。右はやたら細長い木彫りの人形群。


  


ユニークさが評判の床屋の看板、ブティックのマネキン、ガラスに描かれた絵。


  


続いては、昨今、アート作品として高値で売買されている、アート棺桶(かんおけ)。

もはや、死体を入れるよりもお部屋に飾りたい名作揃いです。


  


正直なところ、愛知万博のパビリオン内に出展されているものよりも、こちらのコレクションの方がずっと素晴らしい。

たった420円で出来る世界一周。

 

左の写真はメキシコのタブラ・ボティーバ(TABLA VOTIVA 「祈願の板」という意味)という、板の上に毛糸を貼りつけて作った絵画。

ハリスコ州・ナヤリ州の少数民族ウイチョル族が、ペヨーテ(幻覚サボテン)を食して得た幻覚を

毛糸やビーズをつかって表現したアートです。幻覚がベースですよ、幻覚。

メキシコでは結構お土産として販売されていて、どれもビビットな色彩の素朴な絵です。10数年前、感激して1枚持ち帰りました。

彼らは今でもペヨーテを食べているのでしょうか。

右もメキシコです。メキシコってとこは、ホント奇想天外な民芸品がいっぱい。いちいちショックを受けてしまいます。


  


左の写真はインド、ラージャスターン州の「絵解き用神壇」。要するに携帯用の神棚。

右の写真も用途は同じ。畳めるようになっている携帯用仏壇。チベットと記憶しているのですが定かではありません。


  


左の写真はパプア・ニューギニアのセピック川中流域に住むイアトムルの木彫像。裏側が椅子になっていますが、誰も座らないそうです。

右の写真は、お馴染み、ボリウッドで有名なインド映画のポスターコレクション。


  


こちらはアフリカ、ザンビア ルヴァレの人々が男達の成人儀礼に使う仮面群。

実はこれ、知人(元民族学資料調査収集団員)がアフリカから買い付けてきたものです。今では決して手に入らない貴重なコレクション。


  


ここに紹介したものは、ほんの、ほんの一部。ここがどんなに宝の山か、わかって頂けましたか。

実はこの博物館には、モデルがいます。そう。パリの人類学博物館。ピカソや岡本太郎に多大な影響を与えた場所として有名ですね。

そちらもやはり、1937年のパリ万博のために収集された世界各地の民族学資料品がベースになっています。

以前、駆け足で訪れました。もちろん元祖だけあって素晴らしいコレクションをお持ちなのですが・・・

密かに大阪の方が勝ってる、と思ってしまいました。

それだけここは世界に誇れる博物館なのです。機会があれば是非。

(2005年3月)