シュヴァルの理想宮
LE PALAIS IDEAL DU
FACTEUR CHEVAL
(郵便配達夫シュヴァルの理想宮)Hauterives,France(2001年8月)
みなさまお馴染みの「郵便配達夫が一人で建てた宮殿」。
こちらは33年かかったらしい。ライフワークです。
この宮殿は今やこの地方の観光の目玉となり、世界中から人が押し寄せています。
村のロータリーにはシュバルをかたどったオブジェもあったし。
ちなみに私、パリから日帰りで行きました。行けます。忙しいですけど。
地味だったホームページ(オフィシャルサイト)もこんなに華やかになりました。
(この写真って・・・これじゃモンティ・パイソン系のお馬鹿ではないですか・・・)
↓CLICK HERE!ホームページにリンク
Ferdinand Cheval(フェルディナン・シュヴァル1836-1924)氏は、パン職人を経て、30才で郵便配達夫になった。
彼は43才の時、変な形の石につまずいた。
その日から、配達の合間の宮殿作りが始まったとされています。
たまたまこの地が奇岩怪石のメッカであったせいもあり、材料にはこと欠かず、実に奇妙で面白い建物が生まれました。
現在は国の重要建造物となり修復もされているので、2階あたりまで安心して登れます。
まわりには立派な土産物店が並び、グッズや本が山のように販売されている。
ポスター、絵ハガキ、Tシャツ、ミニチュア・・・。
以下、またカメラ壊れで写真がありません。資料などをご覧下さい。
なかでも一押しのグッズはこれ。
スノードームと紙の模型。
内部はこんな感じ。
存命中の1900年初め頃に、フランスやイギリスの新聞で「郵便配達の宮殿」として取りあげられ、
丁度その頃電車が開通したせいもあって観光客は激増。
晩年のシュヴァル氏は、ここで切符のモギリや案内人をしつつ、絵ハガキを販売していたそうです。
元々、ここを彼はお墓にしたかったそうな。
残念ながらそれは教会などの反対で断念。
で、ここから1キロ離れたところに8年かけて別にお墓を建てました。そっちが仕上がったのは86才の時。
うーん、タフな人だ。
この建物には世界の様々な意匠が登場している、とされていますが、彼自身は海外旅行の経験はほぼ皆無。
全て、毎日配達していた絵ハガキや手持ちの雑誌で見た写真や絵を、
彼自身の「夢」で色付けして作り上げたそうです。
当然、この建物に設計図は無い。増殖増殖また増殖の結果、この大きさになったらしい。
1884年には、木で足場を組んで作業している写真が撮られているので、構造は元々ちゃんとしていたようですが。
彼に関する様々なストーリーは横においてっと・・・何と言ってもここは面白い!ビジュアル的に面白い。
あらっこんなとこに動物が人物が装飾が!と発見は尽きません。
訪問記などではよく「思ってたより小さかった」との意見を聞きますが、そうかなあ。
一人が生涯でつくる規模としては想像を絶するサイズだと思いましたよ。
もし工作好きなお子さまなど連れていって紙粘土を与えたら、即座に爆発的な影響を受けて、
似たようなお城を作りはじめることでしょう・・・。
かくいう私も、額など作ってみました。
きちんと整備修復されたため、元々あったであろう執念のようなモノは薄らいでいますが、
それでも溢れ出すパワーは消えることはありません。
気を抜くと、目の前の建物がぐにゃぐにゃと曲がりだし、自分の足元がおぼつかなくなる。
全体的にうねり始める。人物が動き出す。キャー気持ち悪いけど気持ち良いーー。こんな建物に出会ったことありますか?
制作中は村の変なおっさんとして忌み嫌われていたらしい彼の作品が
このように後世にまで受け継がれ、さらには立派な街の名物となったことに熱い感動を覚えます。
皆様、近所の「作ることに取り付かれた変な人」を大事にしましょう。
100年後には子孫の経済を支えてくれるかもしれませんよ。
でもって、もし自分の妄想が溢れてきちゃった時には、ちゃんとこうやって形にして残しておきましょう。
いつの日にか芸術として日の目をみる日が来るかもしれませんから・・・。
リンク:岡谷公二著「郵便配達夫シュヴァルの理想宮」
(2001年8月)